自主説得とは?
ビジネスシーンでも使われることが多い説得術ですが、その方法にも色々とあります。説得は相手に何かを承諾させるためのプロセスです。承諾させるには、相手の考えを承諾させるものに対して注意を向けさせることが重要です。しかし、相手から何かを説得させられると、それを拒んでしまうのが人間です。相手の考えを押し付けられているような気になるからです。
今回はとある論文に書かれていた「自主説得」という説得法について紹介します。この自主説得は自らによって説得させるということです。これを読んだときはこういう説得法があったのか!とこれはかなり強力かもしれないと思いました。
それでは、紹介しましょう。
自主説得とは?
自主説得なんて聞いたことありませんでした。自主説得とは、自分で自分を説得させるということです。説得したい相手がいるとすれば、その相手自身に自らを説得させるように、こちらから下準備を行います。
自主説得はお互いにWin-Winになる、つまりお互い気持ちよく説得を終わらせることができます。相手に説得をさせられていると気づかせないで、相手自らが説得を受け入れます。
アメリカ国民に虫を食べさせる実験
アメリカで実際に行われた実験があります。社会心理学者のクルト・レビンが第二次世界大戦中に行った実験です。それは「アメリカ国民に虫を食べさせる」という目的でした。背景には第二次世界大戦中が長引くと、食料に困る問題があるため、虫を食料にしようと呼びかけたのです。
Aグループには、「虫食」のレクチャーをしました。虫食の良さを言って、虫食を勧めたのです。「虫食と聞くと敬遠される方もいると思いますが、世界のかなりの国は虫食を一般的に行っています〜〜」と言ったレクチャーです。
一方、Bグループには「どうやったら虫食をするために他の主婦を説得できるのか」をディスカッションしてもらい、虫食のレシピと材料を渡しました。ディスカッションの内容は「多くのアメリカ人に虫を食べさせるために私達主婦ができることは何でしょうか?」と問いかけました。
その結果、虫料理を家庭に出した主婦はAグループの場合3%でした。一方、Bグループはなんと32%でした。(30人中)
つまり、Aグループでは30人中1人、Bグループでは30人中10人もの人が家庭で虫料理を出したのでした。
このことから、人は「自分主義」、他人の言動には従わず、自分には服従するという特徴が見てとれます。
自分の言動は矛盾させたくないという心理的効果です。これは「一貫性」とも呼ばれています。
自主説得のポイントは、「相手自ら言動を起こさせて、自らを説得させる」ということです。
自主説得のやり方
それでは、自主説得はどのようにすればいいのか。簡単です。「いいところはどこですか?」という質問をすればいいのです。
自主説得の際は「いいとこ」を掘り下げねばなりません。相手に「この製品のいいとこは何ですか?」と聞くと、「性能も良くて、イニシャルコストも安いところですね」といいとこを言ってくる。この時点で相手はこの製品はいいと認めてしまっていて、自ら説得されていることに気づかないのです。
こちらが説得したいことを、質問を工夫して相手に喋らせる。相手から喋ることによって自らを無意識に説得していることになります。
なぜこの「いいとこ」を聞くことが効果があるのか。
逆に「悪いとこはどこですか?」と聞くと悪いという印象を与えてしまうため、もちろんよくありません。いいとこを聞くことによって、それはいいものであると相手が思ってしまえば、自ずとそれを欲しくなるのが当たり前です。
いいとこを自分から言ってしまえば、それが一貫性となり、自分の言ったことは正しいと思うようになるわけです。
5W2Hを使う
5W1Hが一般的ですが、自主説得の力をもっと効果的に使うために、5W2Hを意識して使うといいでしょう。
「なぜりんごが美味しい(イイ)のですか?」
「誰と食べると幸せ(イイ)になりますか?」
「どこに旅行をするのがいいですか?」
「何をするといいですか?」
「いつから好き(イイ)になったのですか?」
「どのくらい食べると満足(イイ)ですか?」
「どのようにするといいですか?」
これらを応用してイイトコを掘っていけばいい。
様々なシーンで使えるようになるでしょう。
自主説得の注意点
自主説得を相手にさせる場合は、注意点があります。先程言ったとおり、「悪いとこ」を聞くのはもちろん良くありません。悪いとこを相手が言ってしまうと、悪い印象しか持たないからです。これが1つ目です。
2つ目は、「この商品についてどう思いますか?」のように、「どう思うか」と聞くのもNGです。
「どう思いますか?」
「う〜ん、品数が少ないねぇ、あと少し高いかな」
というふうに、マイナスな意見が返ってくる場合があるからです。また、「どんなことを思っていますか?」も似た言い方になりますので気をつけましょう。
3つ目は「我が社について何か思っていることはありますか?」「いいとこはありますか?」のように「ありますか?」と聞くと、返事は「ある」か「ない」のどちらかになります。これも「ない」と返ってきたら終わりですね。説得のしようがありません。
まとめ
まとめると
- 「悪いとこはどこですか?」
- 「どう思いますか?」
- 「いいとこはありますか?」
この3つは自主説得をする際にNGな聞き方です。
そうではなく、
「いいとこはどこですか?」
「いいとこは何ですか?」
といいとこを深堀りしていきましょう。こちらが「いいとこは何か」の質問をし、相手がいいとこを自ら探して話すことによって、相手自身で自らを説得してしまいます。
その結果、相手も無理に説得させられた気分にならない、Win-Winの状態が出来上がります。
また、自主説得は時間をおいてから効果が出る場合もあります。自主説得のあとから「やっぱり買おう」
相手は「時間をかけて、深く、自らを説得する」のです。
説得関連の記事↓