睡眠を極める【スリープ・レボリューション】
3大欲求の1つである「睡眠欲」。現代では若者にかなり軽視されがちなのではないでしょうか。そう、睡眠は食べることと同等、もしくはそれ以上に大事なのかもしれません。今回は睡眠がいかに人間に影響を与えるか、睡眠を取らないとどうなるのか。よく眠るためにはどうすればよいのか。
「SLEEP REVOLUTION‐スリープ・レボリューション」という479ページからなる睡眠に関する本を買って読んでみましたので、紹介します。
睡眠不足の影響
睡眠不足の代償は大きい。1晩の睡眠時間が5時間以下になると、すべての死因を合計した死亡率は15%上昇することがわかっている。心臓発作、脳卒中、糖尿病、肥満のリスクが高まる。
睡眠化学の専門医キャロル・アシュによると、1週間の睡眠時間を1時間減らすだけでも心臓発作のリスクが高まる可能性があるという。また、ロシアの研究では心臓発作を起こした男性の63%弱に睡眠障害があったことが確認された。
睡眠はこれくらい人体に影響を及ぼすのである。また、睡眠不足は人間の内側にも影響する。デラウェア大学の心理学者ブラッド・ウォルガストは「うつや不安がある人を詳しく診察すると、8割から9割に睡眠障害が見られる」と言うのである。
ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン校の教授ティル・ローエンバーグは、
「認知能力が大幅に低下する。記憶力も低下する。対人関係の適応能力も低下する。あらゆる能力が影響を受け、意思決定の仕方も変わってしまう。」と発言している。
情報番組「トゥデイ」の調査によると、睡眠不足の副作用として、
- 集中力の低下(29%)
- 趣味やレジャーへの関心がなくなる(19%)
- 日中の不適切な時間に眠ってしまう(16%)
- 怒りっぽくなる、子供・パートナーに対して振る舞いが不適切になる(16%)
- 職場での振る舞いが不適切になる(13%)
という回答がされた。
この統計を見ても、明らかに日常に睡眠不足の影響が出ていることがわかる。
オーストラリアの研究によると、17~19時間眠らないでいると認知能力は血中アルコール濃度が0.05%のときと同程度まで低下することが分かっている。これは米国の多くの州の酒気帯び運転基準よりわずかに低い数値である。
さらにプラス2~3時間起きていると、0.1%になる。つまり、酒気帯び運転と同程度に達するのである。
睡眠不足による影響は車の運転時にも影響を及ぼす。眠気運転のドライバーは米国で毎年32万8000件の交通事故に関与しており、そのうち6400件は死亡事故に至っている。
眠気で「船をこぐ状態」を「マイクロスリープ」と呼ぶ。数秒間から1分間程度、本人も知らないうちに眠りに落ちている現象である。この状態に入ると事故を起こすことは目に見えている。
睡眠不足の影響は学生にも被害を及ぼす。最も大きな影響は学業成績の低下である。スウェーデンのウプサラ大学の研究によると、1晩の睡眠時間が7時間未満の学生は落第のリスクが高いという。
脳への影響
長期にわたる睡眠不足は、脳細胞の不可逆的な損失(再び元の状態に戻れない)を招く可能性がある。睡眠不足のマウスは、注意力や認知機能に関する青斑核のニューロンが25%減少していたのだ。
人間でも十分な睡眠を3日間取っても正常に戻らない可能性があることが示されている。つまり、脳の損傷は長期間残る可能性があるのだ。
カリフォルニア大学アーバイン校の研究で、睡眠不足によって実際に嘘の記憶が作り出されていることが見いだされた。
1番の睡眠が5時間以下だった研究参加者は、実際には見ていないニュースのビデオを見たと答える率が大幅に高かったという。
これらの事実から睡眠不足が脳にも大きな損傷を与えることが示された。特に学業への影響が大きいが、高校生や大学生はよくテスト前に徹夜をして頭に詰め込むが、絶対に徹夜はしないほうがいい。眠る前に覚えたことは、眠っているときに脳内でクリアな状態で処理される。よって、眠る前に覚えたことはしっかりと睡眠を取ることによって、記憶に定着しやすくなるのである。つまり、テスト前は十分な睡眠をとって、臨んだほうがいい点を取れる。
よく眠るためには?
睡眠は量より質が大切である。もちろん十分な時間眠ることも欠かせない。では、どうすれば良質な睡眠を取ることができるのだろうか。
特に効果的で具体的な行動として、消灯の遅くとも30分前にはデバイス類(スマホ、iPhone)を部屋から追い出すこと。
もう1つは20分たっても寝れない場合は瞑想をするか、仕事と無関係の読書をするかである。眠れないときに「眠ろうとしない」逆説志向を試すのもありだ。自分で「絶対に眠らないぞ」としっかり目を開けて粘るようにすると、逆に眠れるのである。
実際にグラスゴー大学の研究で逆説志向をしたグループは「眠ろうと努める睡眠努力および睡眠パフォーマンスに対する不安が優位に減少した」と報告されている。
以上「スリープ・レボリューション」を読んで得られた睡眠に関する知識を是非役立ててほしい。睡眠は3大欲求の1つであるので、ぜひ極めて生活を充実させよう。